本郷職業紹介所
私たちは人生の時間の3分の1を、働くことに費やしている。働くということは、人生にとってとても意義深い行為だが、毎日行っている当たり前のことすぎて、自分の働く意味について改めて考える機会はあまりない。転職や失業で新たな仕事を探す必要に迫られれば、職業について考える必要があるが、今度は仕事を探すことに必死になり、立ち止まってゆっくりと考える余裕がない。心の病であると診断されれば、医師やカウンセラーが必要なケアをしてくれるが、働く意味、生きる意味がわからないという病気はなく、頼れる人は限られているものである。今回の作品ではそうした現代人の、心の問題としては重要だがあまりケアされていない「働く意味」について振り返る、もう1つの職業紹介所をオープンする。
《本郷職業紹介所》の来所者は、アーティストが収集した働く意味についてのインタビュー映像を鑑賞したあと、職員と「面談」を行い自らの働く意味を語る。その内容はインタビュー映像として記録され、本人が望めば映像の一部として会場で上映され、他の鑑賞者に共有される。他者の話を聴き、自らも語り記録されるという行為を通じて、働く意味を振り返る。それは昭和初期に職業紹介所として建設された TOKAS 本郷の建物を舞台に現代社会に提示される「職業紹介所」のもう1つの在り方であり、会場における約1ヶ月半の活動自体が作品となる。
本郷職業紹介所 ウェブサイト
https://jobcentre.architectingstories.com